君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)

「俺は何も、してない」

「黙ってりゃ、向こうから来るもんね」

「そういう意味じゃない」



新庄さんが、わりと本気で弁明しようとしているように見えるのは、気のせいだろうか。



「会社で、そういう話はしたくないとか、言ってたのは…」

「そんなこと言ったの? 嘘、嘘! こいつ、同期食いで有名だったんだよ」

「堤!」



新庄さんが、堤さんのネクタイを引っぱりあげて、黙らせようとする。



「大塚、こいつの言うことなんか、信じるなよ」

「俺は、嘘は言わない」

「事実を少し、足したり引いたりするだけって、言うんだろ」



よくわかるなあ、とこりない堤さんが明るく笑う。


私は、なんというか、聞いたことを整理するので精一杯で。

気がつくと、新庄さんをじっと見ていた。



「…俺は、やってないぞ」

「何をですか」



何も、だ。

しばらく黙ったあと、そうつぶやく。


まあ、いいんだけど、多少やってても、やってなくても。

そりゃ、やってないほうがいいけど。


それより堤さんって。

なんだかんだ、今後もこうやって、私たちの間をかき回すつもりなんじゃないだろうか。


それを思うと、頭が痛くなった。

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