君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「新庄さん、雪ですよ…!」
「当たり前だろ」
不発に終わった山へのドライブを、仕切り直そうと言ってくれたのは、新庄さんだった。
道が混んでもいいように、早めに出て、お昼前には着いた。
関東の北の、山に覆われた土地。
有名な三つの山のうち、なだらかな長い裾野を持つ、優雅なひとつ。
その上には、きれいな沼がある。
岸辺の駐車場は、なんと一面の雪原で、薄手のコートで来ていた私は、驚愕した。
「3月なのに…」
吐く息は、白い。
標高が高いって、こういうことか。
身近に山のなかった私には、軽いカルチャーショックだった。
新庄さんは、実はこのあたりはしょっちゅう来るらしく、ちっとも驚いていない。
雪が残っているとはいえ、沼が凍っているわけでもない、新緑どころか春すら来ていない半端な時期に、人出はほとんどなく、駐車場にも車が数台あるのみで、あたりは閑散としていた。
みやげ物屋の横にあるベンチから、沼を望める。
並んで腰をおろすと、新庄さんは、さっそく煙草を取り出した。