君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「7部でメディアを担当していました、堤和之(つつみかずゆき)と申します」
15時頃、フロアの会議室に部員が集められた。
部長が紹介したのは、すらりとしてきれいな顔立ちの、涼しげな印象の新チーフだった。
端的に、必要なだけの自己紹介をして礼儀正しく頭を下げる様子に「ちゃんとした人だ」と誰もが安心し、課長と林田さんまでもが「頼もしい~」と喜んでいた。
「メディアチーム、手あいてる人いる? こっちの体制をざっと説明してほしいんだけど」
春日部さんが堤さんを率いて、メディアチームにやってきた。
ちょうどあいていたので、私がと手をあげて、堤さんを窓際のテーブルに案内する。
「大塚さん、だね」
あらためて名乗ろうとすると、先に言われた。
本当にちゃんとした人だ。
この会社の営業には珍しく、きちんとネクタイを締めている。
それが堅苦しくもやりすぎにも見えず、逆に爽やかで、スマートに感じる。
「イベントと雑誌を担当しています、よろしくお願いします」
「よろしく」
にこりと穏やかに笑う。