君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「最後の砦だったのに…」
誰もが口をそろえてそう言う。
新庄さんの後任である林田さんは、課長とよく似た感覚派で、言ってしまえば自由すぎる。
キャリアは長く、仕事もできるけれど、たとえば「暗黙のルール」や「タブー」などには致命的に無関心で、過去に何度もあわやという事態に陥りかけたところを、その都度ふたりのチーフがカバーしてきた。
いまや、課長の取りこぼしたボールを拾う人が誰もいない。
「取りこぼしも何も、はじめから捕りに行く気ゼロですしね、課長は」
「今考えると全部、新庄さんと春日部さんが走りまくって捕ってたんだな」
高木さんと向かいの席の井口さんが、しみじみと言う。
「新しく来る方は、どういうタイプなんでしょうね」
隣の部といっても、交流はほとんどないので、名前を聞いてもぴんとこない。
ふたりもよく知らないらしく、中途入社らしいよ、という断片的な情報だけが提供された。