君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「堤チーフも、同じくらいでしょうか…」
なんの気なしに言うと、新庄さんが手を止めて顔を上げた。
「来たのって、堤なのか? 7部の?」
「言いませんでしたっけ」
新庄さんの時とは逆に、堤さんは、辞令より前に席だけ異動してきた。
春日部さんが今月いっぱいで辞めてしまうので、引継ぎ期間を設けるためだ。
辞令は来月1日付けで出される。
だから、まだこの異動は公にはなっていない。
堤か、と低くつぶやくと、新庄さんはまた食べはじめた。
なんだろう、知り合いなんだろうか。
「大塚さん」
噂をすればなんとやらで、トレーを持った堤さんが、カウンターからこちらへ歩いてきた。
「さっきは、ありがとうね」
「いえ」
昼前に、私が作った資料のことだ。
クライアントと各代理店の相関図がほしいとのことだったので、ここ何年かの推移も含めて資料にし、渡したのだった。
じゃあ、と立ち去ろうとした堤さんが、私の向かいに目をやって足を止める。
「新庄」