君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
ある意味。

こちらの気持ちが、すでに知られているというのは、とても楽で。

嬉しいのも、戸惑うのも、何ひとつ隠す必要がない。


新庄さんに彼女ができたりしない限りは、もういっそこのままの関係でもいいかな、と思えてくるぐらい。


彩の怒りが目に浮かぶ。

なに丸めこまれてんのよ、と彼女なら激昂するだろう。


だけど、それも気にならないくらい、この人の隣は心地がいい。



「気をつけろよ」



私の歩きやすい箇所を選んで、新庄さんが少し先を行く。

跳ぶように最後の一歩を踏み出した私を、新庄さんは片腕で支えてくれた。


島の、本当の先端。

まっ白な灯台は、意外に小さい。

だけど使命を持っているものだけに存在する健気さが感じられて、可愛い。



「あれ…」



さっきは見えた房総半島が、見えない。

そう言おうとした時、バシャン、と空が割れるような音がして、ぼたりと水滴が身体に当たったのを感じた次の瞬間。


目も開けていられないくらいの水が降りそそいだ。



< 24 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop