君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
呆然とキッチンを眺めていると、ばさっと頭にタオルがかけられた。



「着替え出すから」

「すみません」



ため息が出る。

下着までずぶ濡れな今、一刻も早く服を脱ぎたい、というのが本音だ。

車内でなんとか温まったものの、濡れた衣服に体温を奪われて、全身がまたじわじわと冷えてきていた。


貸せるようなの、あるかな、と、新庄さんが寝室らしい一室に向かう。



「前の彼女さんが置いてったのとか、ないんですか?」



そう言うと、新庄さんは足をとめて、奇妙なものでも見るように私を見た。



「…大塚って、たまにとんでもないこと言うよな」



そんなに変な発言だっただろうか、とあせる。

あるわけないだろ、というあきれた声と共に、新庄さんがドアの向こうへ消えた。


私なりに、建設的な提案をしたつもりだったんだけど…。

よく考えたら、あっても貸さないだろう。


バスルームを借りて、身体に張りついた服を脱ぐ。

思ったとおり、下着まで全滅だ。


下はコンビニで買ったけれど、上はどうしようもない。

借りたスエットは厚手だし、つけなくても問題はないだろう。

水分をとるために下着をタオルに挟んで、また、ため息をついた。


せっかく初めて部屋に上げてくれたのに、こんな状態なんて。

ムードも何も、あったもんじゃない。

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