君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
借りたジャージを、ずり落ちないように、ひざまでまくりあげる。

簡単にメイクを直して、髪はバッグに入れていたクリップでまとめてアップにし、リビングへ戻った。


新庄さんもすでに似たようなスエットとジャージに着替えていて。

タオルで頭を拭きながら、ダイニングテーブルで煙草をくわえて、ノートPCをいじっている。


ほんと、仕事の鬼だ。


と、新庄さんの携帯が震えた。

開いて相手を確認した新庄さんが、目顔で私に断りを入れてくる。


承諾のしるしにうなずいて、私は買ってきたテイクアウトの夕食を、リビングのローテーブルに並べはじめた。


明るくて、柔らかい雰囲気の部屋。

黒だと埃が目立つから、と主婦のようなことを言われて、元カノの選択だろうか、と邪推した。


聞こえてくるやりとりには、私の知らない人の名前や単語が頻繁に出てくる。


長引きそうだな…。

手持ち無沙汰になり、バルコニーに出てみようと思い立った。

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