君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)

送ってもらった別れ際、新庄さんが唐突に訊いてきた。



「石本さんて、社内に相手、いる?」



相手って…。

つきあってる人、ということだろうか。



「わかりません。実はそういう話、あまりしないので」



降りる手をとめて、正直に言う。

新庄さんの話はかなりするけれど、それは行きがかり上、仕方なかった流れが、まだ続いているだけだ。


新庄さんは、そうか、とだけ言って、もうその話はしなかった。


おやすみなさい、と言って、車を降りながら、彩と飲んだ時のことを思い出す。

あの時結局、彩は何も言わなかった。

私も押したり引いたりしてみたものの、無駄だった。


そういう時は、待つしかない。

そう決めたんだけれど。


…新庄さんの言ったことと、何か関係があるんだろうか。



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