君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「がっかり、したわけじゃ、ありません」
「あ、そう?」
必死に声を絞り出す私に、新庄さんは、そりゃ残念だ、と平然と言ってのける。
私は、テーブルをひっくり返したい衝動に駆られるほど、頭に来て。
とてもじゃないけど、まともに顔なんて見られないくらい、恥ずかしくて。
だけど同時に、ほっとしてもいた。
「ほんと、最低ですね…」
新庄さんて。
袖に顔をうずめて言った言葉は、怒りと羞恥と安堵から、ほとんど涙声で。
さらに腹が立つことに、新庄さんは、めったに見ないような大笑いをして。
それから、ふいに優しい声になって、悪かった、と謝った。
「やりすぎた」
「…本当です」
たぶん、私があそこで何か応じていたら、新庄さんのほうがかわしたんだろう。
ひどい男。
熱くほてる耳を手で覆っていると、こめかみに、ぶつけるような雑なキスが来て。
食おうぜ、と、憎らしい声が言った。