君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
課長は別件があると言って、あとは新旧チーフでよろしく、と出ていった。

一瞬、堤さんと新庄さんが目を合わせ、即座に離したのに、私は気づいた。



「そもそもこの話、進めてた最中だったんですよねー」



井口さんが、懐かしそうに言う。



「僕もそう聞いています。新庄がいなくなってから、頓挫したと」

「あはは、お恥ずかしい」



堤さんの、嫌味のない言いかたに、林田さんが頭をかいた。



「課長の言葉のとおり、いい機会なので、何ができるか考えてみましょうか」



堤さんはホワイトボードのほうへ歩き、マーカーを取ると、新庄、と振り返った。



「お前がいた当時のことでいいから、状況と、課題をざっと説明してくれないか」



新庄さんは、いきなり振られると思っていなかったらしく、軽く目を見開く。

けれどすぐに、組んでいた脚をほどくと、机から腰を上げてマーカーを受けとった。



「春日部さんと俺がやろうとしてたのは、大きくふたつ」



言いながら、ボードに文字を書く。



「うちの内部のライン整理と、クライアントとのパイプの整理だ」


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