君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
堤さんが挟む質問に答えながら、新庄さんが説明をしていく。

無作為に書かれたように見えた文字が、丸や線でつながり、やがて大きな相関図に姿を変えた。


さすが…。

鮮やか、だ。


6部時代にはひそかに「新庄節」と言われていた無駄のない説明に、あちこちから感嘆の息がもれる。

また、これを見ることができるなんて。

もう二度と、仕事で、同じ会議室で、新庄さんの声を聞くことなんて、ないと思ってたのに。



「メディアと製品の統括役がいないのが、一番の要因ってことか」

「そうだ。課長でできないこともないが、常に現場に立てる人間がベターだ」

「けど、人員がいなかったと」

「圧倒的に不足してた。それが、もうひとつの問題にもつながってくる」

「人員の入れ替えによる、ノウハウと人脈の分散、だね」

「それと、そこから来る、パイプの混乱」



片手をポケットに突っこんで、新庄さんがマーカーでボードを叩く。

堤さんは腕組みをして、描かれた図をながめながらうなずいていた。


堤さんて、背高いんだ。

雰囲気が柔らかいから気がつかなかったけど、こうして並ぶと、新庄さんと同じくらいある。


いつの間にかボードの周辺には、両チームのスタッフも加わって。

ああでもないこうでもないと話が始まっていた。


私は机に腰をかけ、少し離れたところでそれを見ていた。

同じく遠巻きにしていた高木さんが、あのふたり、知りあいだったんだ、としみじみ言った。

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