君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「もおお、疲れた! あと1本が埋まんないんだよ」
何度、あんたんとこにお願いしようと思ったか、と泣く。
「うちに今、女性誌向けの広告はないよ」
「まあ、そうなんだけど」
今夜は、彩と私の行きつけの串焼き屋に来ている。
どうやら彩は、前回の話を持ち出す気は、ないらしい。
逆に、そっちどうなってんの、と私にばかり話を振ってくる。
「ぼちぼち、かなあ…。なんかもう、おもちゃにされてる気がしないでもない」
「まあ、それはそれでいいんじゃない? あの人の場合、気に入らなければ無視して終わりだろうし」
珍しく、彩が新庄さんに理解を示す。
今日の彩は、なんだか妙に元気で、少しだけ不自然だった。
気になるけど、彩は言わないと決めたら、絶対に言わない。
もどかしいけど、まだ待つしかない。
「バレンタイン、何かするの?」
バレンタイン。
そういえば、そんなものがあった。