君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
振り向くと、堤さんだった。



「ちょっと、注意を受けてました」

「そうなんだ?」



たぶん、動揺が表れていただろう私の返答にも、ふふっと笑って、あっさり通りすぎていく。

その背中が洗面所のほうへ折れ、姿が見えなくなったのを確認して、息をついた。


どこから聞いていたんだろう。

まったく気配がしなかった。


新庄さんとはまた違った方向に、ミステリアスな人だ。

堤さんの話も、彩としたいのに、今月の彩は多忙で、全然会うことができずにいる。


と思っていたら、その日のうちに、彩からメールがあった。



『まだ週の前半ですが、飲みませんか』



…なんで敬語なんだろう。

身体は空いているので、即OKした。

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