君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
そっかー、と改札を通りながら彩が言う。



「ゆうべ邪魔して悪かったなあ」

「それはいいよ、ほんとに」



新庄さんにも借り作っちゃったよ、と力なく息をつく彩に。

向こうはそんなふうに思ってないよ、と我ながら説得力のないなぐさめを言って、電車に乗った。


会社で別れる時、これからどうするの、と訊いてはみたけれど。

彩は、ちょっと考えてみる、と答えただけで、それ以上は何も言わなかった。


デスクについて、手帳を開く。

予定がつぶれたのは、残念だけど、仕方ない。


新庄さんも気の毒だ。

せっかくの休暇に、弔事が重なってしまうなんて。


今日か明日にでも会いたいけれど、新庄さんはそんなに頻繁に誘ってくれるわけじゃない。

かといって、休み中にこちらから呼び出すのも気が引ける。


はあ、と肩が落ちるのがわかった。



「どうしたの」



急に声をかけられて、整理しようとていたファイルをばさばさと落とした。

堤さんだ。

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