君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「すみません」
慌てて拾うと、いくつかを堤さんも拾いあげてくれる。
それらを受け取りながら、そういえば、ブラザーの話も聞きそびれたと思い出した。
「悪いんだけど、自分の席が終わったら、課長を手伝ってあげてくれるかな」
大塚さんが一番片づけ上手そうだから、とにこりと笑う。
こういう他意のない笑顔は、本当に感じがよくて、綺麗な人だ。
堤さんは、新庄さんとの関係を、どんなふうに認識しているんだろう。
「…あの」
「教えない」
出鼻をくじかれて、ぽかんと見あげる形になる。
「新庄に聞きなよ」
名前を出されて、思わず周りを見回してしまう。
みんな、机の片づけで手一杯で、ここでの会話は聞こえていないようだった。
堤さんは、そんな私を見て、おかしそうに笑いながら、自席へ戻っていった。
どうして、私の訊きたいことがわかったんだろう。
まあ、わかるか。
私のほうから堤さんに持ちかける話題なんて、そうはない。
これから体制が変わったら、堤さんとの接点は、増えることになる。
それを思うと、気分が落ちこんだ。