君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「大塚さん」
駅に向かう地下道で、肩を叩かれた。
「堤さん…」
「来てたんだね。僕も、打ち合わせが終わったところ」
涼やかに笑う、綺麗な顔。
体制変更の件で、課長と連れだってこちらへ来ていたらしい。
「課長はどうされたんですか?」
「先方の部長と、ちょっと話してくって。あそこ、仲いいね」
ということは、会社までふたりで戻るということだ。
今は、堤さんに何か言われたら、立ち直れないくらいダメージを受けそうなのに。
コートのポケットに手を入れて、気がつくと、少し早足になっていた。
地下鉄のホームで電車を待っていると、堤さんが、あのね、と口を開いた。
「そこまでへこんでる子にちょっかい出すほど、僕も鬼じゃないよ」
思わず、隣を見あげる。
「図星」
かまをかけられたんだろうか。
いや、勘のいいこの人のことだ。
私と新庄さんに何かあったことくらい、想像がついているんだろう。