君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
私も新庄さんも気づかないうちに、音もなく、堤さんが入ってきていた。



「彼のことは、今でもたいして悪いと思ってないよ。無能は、組織のガン、てね」



言いながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

新庄さんは、忌々しげにそちらを見た。



「大塚にここを教えたの、お前だな」

「じれったかったからさ」



悪びれる様子もなく、テーブルの上の新庄さんの煙草を手に取ると、箱から一本抜き出してくわえる。

火もいい? と催促するのに、新庄さんが嫌々といった様子で、ライターを手に取った。



「お前の考えに、反対はしないが」


点けた火を差し出しながら言う。



「それを決めるのも、裁くのも、お前じゃない」

「自分の仕事を、期待以上にこなしただけで、そんなこと言われるなんてね」

「これ見よがしに、人をおとしめて、辱めて、何が仕事だ」



新庄さんの声が、聞いたこともないほど、険しさを帯びる。

堤さんは、部屋に張りめぐらされているバータイプのベンチのうち、私のすぐ横のひとつにもたれて、おいしそうに煙を吐いて、私を見た。



「新庄はね、僕のチームのひとりを、どうやってか味方につけたんだよ」



やるよね、と笑う。

私はどう答えたらいいのかわからず、ふたりを交互に見るしかできなかった。

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