君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
松岡さん、というらしいそのブラザーは、平たく言えば、堤さんの突きあげに耐えきれず、休職に追いこまれたのだった。

当時、独身寮にいた松岡さんは、そこでも問題になるほど、精神を蝕まれて。



「堤は中途だったから、俺みたいに新人扱いもされてなくて」



それが裏目にも、出た。

上司や同僚も、堤さんを取り立てるばかりだったのだろう。

でも、それは、堤さんのせいじゃない。


私のそんな思いが伝わったのか、新庄さんが続けた。



「堤は、わかったうえでやってた。俺は、それが許せなかった」

「それで…?」



それだけなら、堤さんが新庄さんを憎む理由には、ならないはずだ。

新庄さんは、一息ついて、続けた。



「企画部には、年に一度、企画のコンペがある」

「コンペ?」



聞いたことはある。

確か、部署を問わず、誰とでもチームを組んで参加することができる企画コンペだ。


話がずいぶん飛んだ気がして、思わず聞き返すと、新庄さんがうなずく。



「俺たちの部は、原則として全員参加だった。そこで、堤のチームを負かしたんだ」

「でも、そんなことくらいで…」



あそこまで、根に持つだろうか。

そう思った時。



「新庄はね、卑怯な手を使ったんだよ」



ふいに、柔らかい声がした。

< 87 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop