Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「早く認めちゃいなさいよ、そうすればすぐに楽になれる。あなたをその苦悩から解き放つ鍵はすぐ側にあるのよ? ねぇ、クロ、よく考えてみなさいよ」
「俺は信じない。全ては俺が決める」

 魔女には何か他人には見えないものを視る力がある。
 尤も、サイキックとはそういうものだ。何か常人にはない力を持っている。
 将仁も霊を見ることだけはできるし、十夜や嵐はそれ以上の力を持っている。
 だが、彼女は別格なのだ。彼ら以上に強い力を持つ。
 嵐が言うには三人の中では十夜が一番弱いということだった。
 力で劣るからこそ、自分も十夜も逆らえないのだと、どこか苦痛を感じさせられる表情で語ったのを紗綾は鮮明に覚えている。

「運命は既に決まっているわ。あとは、あなたが受け入れるだけ。いつまでも立ち止まっていては駄目、前に進むのよ。自分の手で扉を開けるの。重ければ、彼女が手伝ってくれる」

 運命が見えると魔女は言う。
 それが真実なのかは紗綾にはわからない。
 けれど、彼女はその言葉によって運命に導くのではなく、従わせようとしているようにも見えた。
 現に、紗綾は十夜に対して特別な感情を抱いているわけでもなく、彼と付き合うなどとはとても考えられないことなのだが、そんなことは彼女にとってはどうでもいいことになってしまうのだ。
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