Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「私には何もわからないから、何もできないんです。ただ、それだけです」

 紗綾はそれを貫きたかった。
 見透かされるとわかっていながら、吐き出してしまうことはできなかった。
 辛いのは自分ではないのだから。
 また、十夜は黙って、それからぼそりと言う。

「……あの男だって昔は他人を寄せ付けなかった」

 十夜が言うあの男はただ一人しかいない。

「九鬼先生、ですか?」
「どこかで他人を拒絶する男だった」

 今の嵐からは想像できないが、嵐が十夜の過去を知るように、十夜もまた嵐の過去を知る。
 そして、どこかでは二人が似ていると紗綾は思っている。
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