Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「月舘はこれでいいんだね?」

 嵐にじっと見られれば、紗綾も緊張感が増す。
 彼は本当に選択したのかと疑っているのかもしれない。
 だが、紗綾も覚悟を決めている。彼について責任を持つと。

「はい、今年の生贄は圭斗君に決めました」

 宣言すれば、圭斗が微笑みかけてくる。
 恥ずかしさを覚えながらも、後悔はなかった。


「って言うか、さっきから部長がぶっ倒れそうな顔してるんスけど」

 ちらりと圭斗が十夜を見る。
 彼の様子は正にその通りだった。いつ倒れても全く不思議ではない様子だ。

「今日が終われば、ぶっ倒れようとどうなろうといいよ」

 笑いながら言う嵐は薄情とも感じられる。
 何もない日だったならば十夜は間違いなく早退していただろう。けれど、今日は嵐がそうさせなかったに違いない。
 だから、少し暫くここで寝ていたのかもしれないと紗綾は思う。
 尤も、将也からそんなことは聞かされていないのだが、敢えて言う必要もないことなのかもしれない。彼も何もかも報告してくるわけではないし、午後のことならばどうせわかる。
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