Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「そういうの、よくわからないの。何か、一日を乗り切るのに必死で」

 入学して一年も経てば誰かを好きになっても不思議ではないのかもしれない。
 紗綾のクラス内にもカップルが誕生しているし、陸上部の恋愛事情もなぜか香澄から流れてくる。
 その香澄自体にはそういう話がない。何度か将也と噂になったことはあるが、香澄が照れ隠しでも何でもなく本気で嫌がるので、以来タブーになっている。

 けれども、紗綾はそういったことを考えたことがなかった。
 嵐はよく婚姻届だとか将来の話をするが、現実味がなく、彼なりの冗談だと紗綾は思っていた。
 八千草は恋多き人間だったが、振られてばかりだったという印象しかない。
 そして、十夜は大体あの調子であり、時折優しさを見せられても、彼の瞳の奥にあるものを見る度にそれが好意から来るものではないと思い知らされた。

「でもね、もし、選ばれたことがね、神様のお告げなら、私の役目って何だろうって思ったの。私でも少しは誰かの役に立てるのかなって」

 全てのことをただのことを不運で片付けるのは辛い。
 もし、運命ならばと幻想を抱いている方が幸せだった。

「俺は不安にさせないっスよ。悲しくさせない。後悔もさせない。置き去りにもしないから」

 圭斗の言葉は何か強さを持っている。
 けれど、その瞳の奥に何かが揺れている気がした。
 そして、それはどこか十夜と重なって見えた。
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