Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「まさかとは思うっスけど、部長のこと、好きってことないっスよね……?」
『まさか、あの性悪男のこと好きになったとか言わないわよね?』

 圭斗の問いに不意に記憶の中の香澄の問いが重なって、紗綾は慌てて首を横に振った。
 彼女は紗綾がオカ研にいることに賛成ではない。
 八千草がいた頃は良かったが、いなくなってからも顔を出すと言った紗綾に香澄はそう言ったのだ。

「じゃあ、先生とか? 婚姻届持ち歩いてるくらいだし」
『まさか、クッキーが好きなの? ダメよ? 絶対、ダメ!』

 またも香澄の言葉が重なって、紗綾は再度首を横に振る。

「あれは、先生なりの冗談なんだと思う。女子には優しいし」
「それって、贔屓っスよね。それに、俺が見る限り、紗綾先輩は特別って気がするんスけどね。本気っぽくて」

 特別だと言うのなら、それは自分のクラスの生徒であり、部員であるからであって、それ以上のことなどあるはずもないと紗綾は考えていた。
< 88 / 712 >

この作品をシェア

pagetop