やっぱり愛おしい
モチベーションが下がった私は、一息つこうかと給湯室へ入った時
「茉優莉。」
私を背後から呼ぶ声がした。
「……。」
この声は振り向かなくてもわかる。
ふたりきりでいる時に呼んでくれる、愛おしいこの声。
愛おしいコロンの匂いに、鼻を微かに掠める煙草の香り、背後でもわかるほど私を射抜くくらい強い視線。
わかるからこそ今は振り向けない、振り向きたくない。
できれば、今はそっとしておいてほしかった。
「……藤堂部長、ここは会社ですから、名前で呼ばれたら困りますし、誰かに見られたら不審がられます。
コーヒーでしたら、後でデスクへお持ちしますから。」
今はひとりにしてほしいのに、貴晶さんは給湯室の扉をバタンと閉めて、電気まで消してしまうと、私の腕を引っ張った。
突然のことに声を出す余裕もなく、私は貴晶さんの腕の中に包まれた。
「貴……部長、離してください。誰か来たらまずいです。」
離れようとして抵抗しても
「内側から扉を押してるから誰も入れない。それに会社であろうが今はふたりきりだ。」
そう言って貴晶さんは、私に触れるだけのキスを落とし、抱きしめる腕のチカラがいっそう強くなった。