やっぱり愛おしい
「茉優莉、いったいどうしたんだ?
原案のことで川田に注意されてたな。最近お前の顔色が悪いのは、俺も気にしていた。どうした?何があった?」
オフィスで怒鳴る声とは違って、ふたりきりの時に私だけにささやいてくれる優しい声に、こんな時でも胸がキュンとなる。

でもこの声は私だけのモノじゃなくて、
きっとあの女性にもささやいているんでしょ?
普段あまり見せることのない優しい笑顔まで向けて。
なのに私の心配をする余裕まであるなんて、貴方はどれだけ大人なの?

「……別に何でもありませんから。原案は私の初歩的な配色ミスですから、川田さんの指摘に助かりましたし、体調は心配ありません。
私は相変わらず、ちゃんと食べて寝てますから、ご心配おかけしましたけど、以後気をつけます。」
要件は伝えたから早く戻ってほしいのに、貴晶さんは私を簡単に離してくれず逆に
「茉優莉、今日ウチに来い。」
突然私にそう言い出した。
「えっ、何言って……だって今日は水曜日。」
明日も普通に会社はあるのに
「拒否権はない。俺は夜八時過ぎになるけど先に入って待ってろ。それに心配するな、泊まっても朝ちゃんと送ってやる。」
そう言い残して貴晶さんは私を解放すると、頭を優しく撫でて給湯室を出て行った。
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