【完】キセキ~君に恋した時間~
じゃあそれなら美海は何処に───その
答えは、割りとすぐに理解した。
美海の横に置いてあった、すごく大きな
旅行バッグで。
いきなりドアに顔面を強打したり、鼻血
がでたり罵倒されたり、と、普段はあり
得ない出来事が連続で起こってしまった
が為に、すっかり見過ごしていたけど。
ちゃっかりとそれは、それこそ、「よう
!お邪魔してるぜ!」的なノリで、美海
の隣に存在していたんだ。
父さんは既に"出来上がっていた"。
顔も真っ赤だし、「あれぇ~?美少女が
いる~?おいおい、やるなぁ、徹ぅ」と
ロクに回らない呂律でへらへら笑ってい
る辺り、相当酔っている。
「……酔いすぎだから、父さん。美海だ
よ、美海」
呆れた顔でそう言えば、僅かにその目が
見開かれ。
次の瞬間、愛嬌のある笑い皺を目元に作
りながら、目を細めて、へにゃりと笑っ
た。