【完】キセキ~君に恋した時間~




そして──……。



美海のお父さんも、再婚して一年ほどで
、不慮の事故により、他界。



美海はその頃から既に、実の両親を二人
とも亡くしていた。



そして……今だからわかる。多分美海は
、育児放棄されていたんだと思う。



育児放棄と言っても、傍目にはわからな
い程度のもの。生きていくために必要な
最低限だけを行っていたんだと思う。



ご飯を与えられ、寝床を与えられ、着替
えを与えられる。ただ、それだけ。



幼い頃の俺からみた美海のお母さんは、
"イイ人"だった。



美海の家に行けばお茶もお菓子も出して
くれる。単純な俺には気付けなかった。



その瞳が美海を映すとき、酷く真っ暗に
染まることに。



美海はいつも勝ち気で、強気。



だけど時折───そう、ほんと、たまに
だけど。



触れたら崩れてしまいそうな儚さをたた
え、その瞳に大きな涙を浮かべる。





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