トワイライト
  だからもともと軋(きし)んでいた高階家の運命の歯車に、直接油を注(さ)したのは、むしろ有を引き取った夏目夫妻だったのだろう。そうとは知らずに有は交通事故をきっかけとして、自分の出生の秘密を知った。そうして夏目夫妻が蒔(ま)いたその種は、やがて有の手によって命を与えられ、そしてその後美有が水と栄養を与えた結果、如月の力添えでやっとその種が芽吹いたのである。




  そしてその芽はやがて花が咲き実を結ぶだろう。だが果たして最終的にその花はどんな花が咲き、またその実はどんな形になるのかと言う予想が、今の段階では皆目見当すらつかないのである。だが願わくはこの後大輪の花が咲き、そしてその実がみずみずしくたわわな果実に成長してくれる事を、治子はただ祈るばかりだった……。
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