トワイライト

1‐有の本音

  この時実を言うと有はじょじょに一部抜け落ちていた記憶が戻ってきていた。それは萌が有の恋人であった隼人の事を好きになり萌が有との友情を壊したくない一心で、有の前では愛する隼人への思いを無理に心の中で押し殺して、常に平静さを保っていた事を。




  そしてその時萌の心の片隅には親友の彼氏である隼人を愛してしまったがために、常に有を友達として失う事への恐怖心があり、そしてまた有との友情を大切にしてきたはずの萌が、そんな自分自身に対する嫌悪心に常に苛(さいな)まれ、酷(ひど)く苦しんでいた事も……。




  一方勿論有はその頃確かに自分も隼人を愛していたし、また萌との友情も大切に思っていた。尚、有は有でその事に頭を悩ませてもいた。が、しかしそんな時に大雅との結婚話が持ち上がったのだ。だから有はこの時しばらくは萌と隼人の事を一胆心の片隅に追いやって、二人の事を棚上げする事にしたのである。つまりその時有もまた隼人と萌の二人の事を両天秤にかけられない程大切な存在として捉(とら)えていたからだ。




  でもってその頃マチムラの財政はかつてないほどの危機にさらされていた。だからこの時有は自分の養両親(おや)に町村家の長男である大雅との結婚話を持ちかけられて、とても戸惑い悩んだ。が、しかしこの時有は養父(ちち)から自分はマチムラの代表取締役である司(つかさ)とは学生時代からの親友なので、どうしてもマチムラの会社の危機を救いたいのだと懇願されたのである。
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