トワイライト
  だがそれは瞳子が崇晃を愛すればこそだと知り、そしてまた瞳子は崇晃が施設で育ったと言う事実を知らずにいた事が、そもそも理子に瞳子が諸刃(もろは)の剣(やいば)を向けたきっかけだったと言う事が解り、理子の心は少しづつではあったけれど徐々に氷解していったのだ。




  ちなみに人にはそれぞれ寿命があるから、皆それぞれ定められた生を全うする義務がある。だとしたなら立ち止まらずに定められた命が尽きるまで生きるには、いつまでも過去に拘り続けるよりも常に前を向きながら生きる方が良い。例えば理子は日向の秘書をしていて、瞳子は嵩晃の妻である。そして日向と嵩晃はお互いに間宮家の会長亮太の実の兄弟の子供なのだ。




  尚、自分達がこうして何不自由なく暮らせているのは、取りあえず間宮服飾産業の経営が今現在順調に行っているからこそであり、またこれから間宮服飾産業を衰退させる事なく発展させていくには、日向と嵩晃はなくてはならない存在である。だからそれら全ての事情を踏まえたならやはりいつまでも理子が瞳子に対する憎しみの心を持ち続ける事は、ナンセスな事なのだ。だからこそ理子にとっては瞳子の過去の過ちをいち早く許す必要があった。




  まあ、結果的に瞳子の自分に対する罪を全面的に許すのに理子はだいぶ年月を要したけれど、それでも以前のままよりかは遥かに進歩したと言える。それに皮肉にも瞳子が差し向けた男性達の一人である猛の子供をお腹に宿し、やがて美有と有の双子を産む決断をして二人の子供を産み母親となった事は、理子がその後の人生を歩んで行く上での、多大な生きがいと幸福感をもたらした事は否定出来ない事実なのだから……。
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