最後の恋―番外編―


「そんなんで、大丈夫なの?」

「大丈夫なんだよな、なんだかんだ言って誠人、優秀だから。経営の才能があるんだよ、アイツ」


学はそう笑いながら車を停める。そこは初デートの時に車を停めた駐車場だった。
こんな心境のまま宮田さんに会うのって、とっても気まずい。
がっくりとうなだれている私のシートベルトを、身を乗り出して外してくれた学は、運転席に身体を戻す時、ついでとばかりに私の唇を掠めとっていった。


「っ!」


思わず口を押えて振り向くと、学はいたずらを成功させた子供の用に、したり顔で笑っていた。でもその表情とは裏腹に「気にしないで大丈夫」と、私を気遣う言葉をくれる。


「誠人が社長サンだろうとなんだろうと、美月の知ってる、レース編みが得意で料理の上手なクマさんってことに、変わりはないんだから」

「……そう、なんだけど……」

「それに、誠人が社長ってことよりも、春陽の好きな人だってことの方が、衝撃的事実だろう?」


そう言われて、今まですっかり忘れていたことを思い出してしまった。

そうだった。宮田さんって、お姉ちゃんの好きな人なんだ!

そのことを忘れていた自分にもビックリだけど、今度はシャチョーさんってことよりも、そっちの事実で頭が埋め尽くされてしまった。

それこそ本当に、どういう顔していいかわからない。

うっかり口を滑らせることはないけれど、でも、宮田さんの顔を見るたびに“これがお姉ちゃんの好きな人”って絶対思っちゃう。
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