最後の恋―番外編―

私には私にしかないいいところがあると言ってくれるお姉ちゃんだけれど、やっぱり苦手なものが何もないんじゃないかってくらいお姉ちゃんは完璧だと思う。

料理も、裁縫も、仕事も、大きなことから小さなことまで、どんなことでも生まれ持った才能で完璧にこなしてしまう。それは全部、私なんかよりお姉ちゃんが持つべきものなんだと分かるけれど。
でもやっぱり私の分も少しお母さんのお腹の中に置いて行ってほしかったなって、思う。


「お姉ちゃんって本当に器用だよね」


休日の午前中から、お姉ちゃんの部屋で私の方が早く宮田さんから習い始めたレース編みを一緒にしている。

私はレース針をぎこちなく動かして、宮田さんから送られてきたキットの説明書を何度も見ながら四苦八苦して少しずつ編んでいる。なのにお姉ちゃんはレース針ではなくてシャトルという変な道具を使って、説明書にも目をやらずにすいすいと泳ぐようにどんどん編み上げていくのだ。
その魔法の様に動く手元を見ていたら、思わず編んでいた手を止めてついぽろりと言葉を溢してしまった。


「うーん、これって慣れだし、同じことの繰り返しだし。編み物と違って編み棒使わなくて済むから楽なのよね」


嫌味でもなく本当にそう思っているらしい言葉の返事に窮してしまう。

習い始めて一年以上経っている私を目の前に、そんなことを言わないでほしい……とは言えなくて、「すごいね」と、そんなお姉ちゃんにただただ感心する言葉しか出てこなかった。。
その間にもどんどんと形を成していくお姉ちゃんのレースは、あんなに早く手が動いているとは思えないほど綺麗な仕上がりだ。


つい自分の手元を見て溜息がこぼれてしまう。
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