最後の恋―番外編―


お姉ちゃんより時間がかかっていて、進みも遅い癖にガタガタのボロボロな仕上がりである自分のレースは、お姉ちゃんと比べるのがおこがましいほどひどいものだ。

これを学にあげようとしていたんだと思い至って、さらに落ち込んだ。

……これ、あげるのやめよう。

いつかの編みかけだったレースのストラップは、まだ学の携帯についている。けれど、習い始めに作ったものってこともあって、今編んでいる作りかけのものよりずっとひどい仕上がりだったりする。

それでもそれを渡した時の学は、お世辞なんかじゃなくて心から喜んでくれて一度も外すことなくつけ続けてくれている。だから時間が経ってだいぶ汚れ始めたストラップを、新しく編んでプレゼントしようとしたんだけど……。


やっぱりお姉ちゃんと編むんじゃなかったな。 どうしても比べちゃう。


「それにしてもやっぱり誠人君のレースって完璧よねー」


その声に再びお姉ちゃんへ視線をやれば、お姉ちゃんは私が初めて宮田さんに会った時に貰った黒いレースのコースターを眺めていた。

といっても、そのコースターは学に買って貰ったマグカップの下に敷いてあるから、その全貌は見えないはずだ。けれど確かに宮田さんの作ったものは既製品と見間違えてしまうほど、ほつれも少しのずれもない。

でもお姉ちゃんの作るレースも宮田さんに負けないくらい十分完璧だと思うんだけれど、完璧主義のお姉ちゃんには自分の作ったものが宮田さんに及ばないように見えるのだろう。

そんな高いレベルで競われても私の立場がなくなるだけなんだけどなぁ、なんて自分で突っ込みながらも、さっきやめようと決めたばかりの手の中のレースを再び編み始めていた。

いびつでも、お姉ちゃんのより下手でも、それでも学への愛情はこもっているもんね。
きっと学もそれを分かってくれるに決まっているし。

ここでコンプレックスのせいで編むのをやめた方が、学は嫌な顔をするだろうことも分かるから。
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