無気力女神と何様ヒーロー
 


「じゃあ、羽衣奈さんには俺のあげる」
「えー……これすごい湿ってるんだけど」
「腕に巻くんだから別にいいだろー」

ジャージの上からぐるぐるとはちまきを巻き付けられ、不格好な蝶結びが右腕に揺れる。
顔を上げると目が合って、彼はまた笑った。

「ぜってー優勝するからさ。今度こそちゃんと見とけよ」


ぽんぽんと私の頭を叩き、スタンドを下りていく宙の背中。
所々砂で汚れた、そのオフホワイト。

私の腕に揺れる、よれて霞んだ細い赤色。


どうしようもなく眩しく見えたのはたぶん、気のせいではないのだろう。

「羽衣奈、愛されてんねー」
「……うるさい」

志保の冷やかしに、私はもう一度、帽子のつばを火照る顔に引き寄せた。




 
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