散華の麗人
――翌朝

「バカモノ!!」

朝早くから陸羽の怒鳴り声が城中に響き渡った。

「何故、相談もせずに勝手に決めよる!?バカか!!本物のバカモノじゃな!?」
陸羽の剣幕に部屋の隅に待機している与吉郎が一瞬怯む。
「バカに本物も偽物もあるかいな。ちとは落ち着きや。」
怒鳴る陸羽に一正が言う。
(やれやれ。陛下というお人は……)
与吉郎は呆れる。
「祭くらいええやろ。」
「何度目と思っておる!」
「さぁ……まー、何度でもええやん?」
さも当然の様に一正が言った。
「今の状況をわきまえよ!!」
そう言うと、背後の壁を指差した。
壁の塗装は剥げ、骨組みが剥き出しになっている。
(うわっ……)
与吉郎は唖然とする。
「この壁が修繕出来ぬ程にまで財政が」
「あ~もう、喧しい!!」
一正は陸羽の言葉を煩わしそうに遮った。
(喧しいって……)
与吉郎は呆れて言葉も出ない。
陸羽は立ち上がった。
「喧しいじゃと!?お前が分からないから言ったまでよ!!」
「金ならリアンがなんとかする。」
また、さも当然の様な回答をした。
「そこまでして、祭なぞするな!!大体、他国に貸しを作ると付け込まれる。そのようなことをしようなど国王にあるまじき行為。お前にはその自覚が」
「わしは幼なじみに金借りるだけやで?」
とぼけたような返事をすると、陸羽は杖で一正の顔スレスレを叩いた。
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