散華の麗人
少しの間、茶々は黙っていた。
「あの、この方は……?」
沈黙の後、茶々が漸く問いかけた。
「わしの乳兄弟の畝」
「八倉雅之だ。」
幼名で紹介する一正に怒ったように雅之は主張した。
「そう、ですか。」
(偉そうな人だ。)
茶々は雅之を真っ直ぐ見た。
(……陛下とは、全く違う雰囲気だ。姿形は似ていても、この人は“太陽”ではない。この国を照らす太陽が陛下なら、この人は“夜”だ。)
太陽が居ない間に君臨する黒い夜。
彼を茶々はそう評する。
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