散華の麗人
雅之の表情は、一正そっくりの笑みを浮かべている。
「無条件降伏などする気がないと解っておる。それに、あんたらが気に食わないのは民に投資する余り、兵士に対する供給が乏しいからやろ。そして、命を張っているにも関わらず、民の二の次三の次や。」
(兵糧庫・兵士への出費の記録からも解る話だ。)
「ほぅ。」
(わかってるじゃないか。)
柚木は腕を組んで笑んだ。
「あと少しの……せやな、千代の葬儀が終わり、成田の復興が終わった後、必ず兵士の給料を上げることを約束する。」
「口ではいくらでも言えますよ。」
「せやな。だが、わしを最後に信じて欲しい。」
雅之は真っ直ぐに柚木を見た。
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