散華の麗人

亀裂

そんなある日だった。
一正は真っ青な顔色で自室に入る。
人払いをし、風麗さえも近寄らせなかった。
雅之は一正の代わりに政務をしているようで、忙しそうだ。
それは、一正を病魔が蝕んでいっているということを現しているようで風麗は戸を叩く。
「陛下。」
返ってくる言葉はない。
代わりに、咳き込むような音がするだけだ。
「薬湯をお持ちしました。」
後ろから利光が来る。
「風麗殿、下がっても」
「いいや。いつ、呼ばれるか解らない。此処で待機してる。」
それが仕事だと風麗は言う。
「八倉殿には付かなくていいのですか?」
「いいと言われた。だから、手持ち無沙汰なんだ。」
「そうですか。」
利光はそう言って部屋に入る。
見えたのは眠っている一正であろう人影だ。
「私も」
「貴方は此処で待っていて下さい。」
風麗に利光は“知られたくないのですよ”と困った顔で付け加える。
「……」
納得いかないが、彼ならばそう言うだろうと風麗は納得する。
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