散華の麗人
風麗はむすっとした顔で部屋に入った。
「クソ引きこもり野郎。」
雅之は一正を見下ろす。
そして観察するようにじっと見る。
「狸寝入りなのはばれてるぞ。」
「……」
一正はもぞっと身を縮こませた。
「寝ていたいなら一生寝てろ。」
雅之はそう言うと風麗を見た。
「ここに居るのが、案山子と引きこもりでは話にならないな。」
やれやれと溜め息をつく。
「案山子扱いやめろ。」
風麗は不愉快に思って眉を寄せる。
雅之は訂正する気はないらしい。
「陸羽派と現国王派の確執が深まっている。俺が貴様の代わりに方々に散らばっている大名や家臣を城に呼び出した。」
それに対して一正は何も言わない。
「表面上でいくら取り繕おうとも、啀み合っているのはまず間違いない。態度に出ていた。」
「陛下が見抜けないと思っているのでしょうね。」
風麗は一正を見る。
「私もここ数日の動きは怪しいと感じる。あからさまに、陸羽派は現国王派を、現国王派は陸羽派を避けている。」
そして、考える。
「家老や大名だけではない。足軽や小姓、更には侍女までも同じことが言える。」
「……」
風麗に一正はもぞりと体を動かす。
「それを顕著に表すのが、一昨日。」
そう言うと風麗はあからさまにうんざりした顔をした。
「侍女の間で少々問題が起こりまして。」
一正にきいているか伺う視線を送る。
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