散華の麗人
放り投げるように部屋に一正を押し込むと、雅之は一正の胸ぐらを掴む。
「正気か?」
それは今から柚木のもとへ行くことだ。
「貴様は今や隠居。このことに携わる必要はない。それに、今の容態で何を寝ぼけたことを言っている。寝てろ。」
永眠させようとするように乱暴に一正を突き飛ばした。
「労わってんのか、殺したいんか……どっちや。」
一正はそのまま起き上がらない。
目の前の景色がぐわんぐわんとまわっている。
「この件のことだけやない。」
「伊井薫の話ならば当主ともう再会しただろう。話はそれまでだ。」
「そんなんでは納得が……」
その先は雅之の睨みで牽制された。
「そのような心など知るか。」
冷静に言い放つ。
「どういうことにせよ、今の貴様は寝ることが仕事だ。これは、命令だ。逆らえば殺す。」
「……どっちが主がわかりゃせんわ。」
一正は観念した。
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