散華の麗人
少しして、一正は三人の元へ行った。
隣には雅之が居る。
ふらつく一正の身体を倒れないように雅之が時折引っ張る。
誰の目から見ても、不調は明らかだ。

部屋に入ると、リアンと秀尚がこちらを見る。
利光はこちらを見ずに目を伏せている。
「待たせてすまなかった。」
そう言って一正は座った。
「要件は何や?」
秀尚を見ると尋ねる。
「それより。」
秀尚が雅之を見て怪訝そうな顔になる。
「室内で笠を被るとは、何か理由でも?」
そう問われて一正は困った。
雅之が生きていることを知るのは陸羽や利光などほんの一部に過ぎない。
(だが、恐らく……)
秀尚やリアンも知っている。
以前、景之が陸羽派に雅之の情報が流れていると言っていた。
(試しているのか。)
真実を話すのか、偽るか。
(狸の心底……暴いてやろうぞ。)
秀尚は一正を見据える。
一正は雅之を見る。
「……人払いを。」
そう言うと、雅之も一正を見た。
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