それでも君を好きになる
何もかもが彼なのだ。
姿も声も仕草も。
全部が彼そのもので。
あたしは「…うーん」とうねりながら考える。
ここはあたしの部屋で。
今目の前で余裕な笑みを浮かべてあたしを見ている男の名前は三浦ハル。
あたしの彼氏だった男。
いや、過去形ではないのかもしれない。
彼がこの場にいるということは、現在進行形でもいいのかな。
うーん、だけどなあ…。
「おい、おいってば。」
「ちょっと静かにしてて。」
「えー、無理ー。」
うるさくしているハルを無視して考えてみるけどわからない。
だっておかしい。
おかしいんだ。
これは夢かもしれないし、もしかしたらただの幻かもしれない。
あたしの頭がちょっとおかしくなっただけかもしれない。
だけどどっからどう見ても三浦ハル本人にしか見えない彼は、確かにここに存在している。
念のために頬を引っ張ってみたら、やっぱり痛かった。
ああ、現実か。