T&Hの待望
上級生の教室にもかかわらず、兄を発見した伸一は、臆することなく踏み込んで来た。
兄の前席が無人だったのをいいことに、椅子に逆さ座りして『宇宙人説』を唱えたのだ。
「……で、結局何の用だ? 遠路遙々喧嘩売りに来たか?」
「だって、三笠里子だぜ? あの人が何者か知ってんの?」
「今知った。その名はミカササトコ」
「……」
名前も知らなかったんだね……。
ガクッと頭を垂れた弟は、侮蔑と呆れを配色した視線を自分に寄越すのだった。