恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「お前んとこのだけ?他所のポストは?」

「えっ……さぁ。気になって見渡したことはあるけど、多分ウチだけ、かな。最初は鍵つけてなかったんですけど、腹立ってきてこないだつけたんです。でも意味なかったですね」



ゴミを散らかったままにするわけにもいかない。
一旦家に帰って、ゴミ袋を取ってくるしかないだろう。


バッグの中に手を入れて、家の鍵を手探りしていると、携帯が手に触れて振動しているのがわかった。


どうせ、また母親か。
そう思いつつ、携帯を手にとってぱか、と開く。



「あ、藤井さん。気にせず帰ってください。ゴミは仕方ないけど拾ってくしかないし」

「あぁ、っつか大丈夫か。地味に陰湿だよな」



地味も陰湿も似たような言葉だな、と思いつつ。
携帯画面に目を落とした私は、首を傾げた。



「あれ、お母さんじゃない」



呟きに、藤井さんが反応して立ち上がる。
気にしているようなので、携帯画面を藤井さんに向けた。



「非通知。誰だろ」



わざわざ非通知でかけてくるような相手はいないのだけど。
気になるので、通話ボタンを押して耳にあてた。



「はい。もしもし?」

< 117 / 398 >

この作品をシェア

pagetop