恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「それなのに、一人でいるのは寂しくて、甘えてた。だから」



お互いの目の奥に、自分を見ながら。

吐息が混ざる距離と、かすかに触れる唇が、さようならを告げた。



「一人で立っていられるようになるまで」



一人で立てなきゃ、誰かを支えるなんてできない。

恋は、そういうものでありたい。




揺れる視界の中で、彼の瞼が静かに閉じるのを見た。



「いいよ、離れてやる」



その瞬間、頬を流れたのはどちらの涙だったんだろう。


緩んだ掌をほどいて彼の首に絡ませて、名残惜しむように頬を擦り寄せて


交わる腰が溶けて一つになる瞬間まで


今日で最後の


友達と恋人の境界線を、浮遊した。




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