恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
握り返したら、少し安心したのか、押し付ける力が優しくなった。
顔を合わせづらいのか、ずっと私の首筋に隠れてゆらゆら揺れて。


握り返したら、少し安心したのか、押し付ける力が優しくなった。
顔を合わせづらいのか、ずっと私の首筋に隠れてゆらゆら揺れて。

私の問いに、少し息を呑む気配。



「好きだった…かも。……しれない」

「何それ」



くすりと笑ったら、一際奥を抉られて熱い溜息がもれた。



「こうする度に、境界線がわからなくなった…」



……抽象的だけどなんとなく理解はできる。
私達は、線引きを間違ったのだ。


若しくは、怠った。



「ごめんね」



私の暗闇に、いつの間にか彼を巻き込んだ。



「…お前は何が怖いの」



心の奥を紐解いていくような。

そんな彼の問いかけが、すとんと胸に落ちてきた。

そうだ、私はずっと、怖かったんだ。



「私は」

「うん」



伏せていた顔を上げて、彼が額と額を重ねた。

いつもの優しい目と出会って、私は安心して答えを見つける。



「恋をするのが怖い」



簡単に人を壊せる威力を持ってるもの。

深く一人を想うことが怖い。
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