恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「カナちゃんは今休憩?」

「いえ、今在庫整理に…あ、戻ってきました」


在庫帳を手に戻ってくるカナちゃんの姿が見える。
彼女も、店長の姿を認めて少し足を速めた。


「店長、一条さん。お疲れ様です。どうされたんですか?」

「会議の後で寄ってみたのよ。狭山さんに彼が少し話があってね。カナちゃん、暫く一人で大丈夫?」


不思議そうに首をかしげながらも、問題ないです、とカナちゃんが答えると、店長は私に向き直ると、訝しい表情の私に苦笑した。


「大丈夫よぉ、お小言じゃないから。とにかく、一条君と話してきて」


お小言じゃなくても本社の人間が直々に名指しでお話し、というだけで十分不安材料です…と言いたくなったが、当人が目の前にいるので仕方なく飲み込んだ。


「それじゃ、外で話しましょうか」


一条さんに促され、私は制服を隠す為のカーディガンを羽織るとその背中を追った。



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