恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「嫌いだけど手助けしてもらった気はするし。だから、お返し」

「だから、なんの手助け?」

「藤井さんも思い切りよく失恋しちゃった方が良いと思うのね」


会話に微妙なズレがあるのは、何か言いづらいことがある顕れなんだろうけれど。恵美の言わんとすることはなんとなくわかる。


「藤井さんになら、私ちゃんと言ったよ。気持ちには応えませんって」


今度は恵美が、きょとんと目を瞬かせる番で。
二人して同じような表情で見合わせる。


「そうなの?じゃあ私余計なことしちゃったかな」

「そうだね…っていうか、あの人面と向かって私に身体目当てだって言い切ったけどね」


いや、それはないよ、多分?
って恵美が何か思い耽りながら、呟いた。


「うん、でも。妊娠したことは知らないわけだしね。ここで現実をはっきり見といたほうがいいよね」

「だからって、あの人きっとどってことないと思うけどなぁ」


私は、テレビ台の下のDVDをダンボールに詰めながら、言った。


自分の気持ちをはっきりさせた後、そのうちまた売り場に来そうな気はしていたけど。
その日は思っていたよりもずっと早く、そして何事もなかったような表情でやって来た。


いつもどおり適当な会話をしてお菓子を買って、普通に帰っていくのを見て、やっぱり自惚れだったかなと、少し恥ずかしい気持ちにさせられたのだった。


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