恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
『カナちゃんから連絡来たから、多分かかってくるんじゃないかなって思ってた』

「あぁ、そうか」


なんか、格好悪いな。
あぁ、でも。


それでまた躓いてたら、今までと変わらね。



「話がしたい」

『私は無いよ』

「今、どこにいんの」

『家』

「…その家はどこ」

『言わない』



お前はなんで電話に出たんだよ。


そう言いたくなる程の素っ気無さに、苛立ちながら次の言葉を探していたら、狭山の方から振ってきた。


『こないだね、駅で会ったでしょ』

「え?あぁ…」


意味不明に、引き返して帰ってったやつか。


『あの時、ほんとは、笹倉の帰る時間くらいかなぁと。会えたらラッキーで話しようと思ってた。でも』


話の先が予測つかなくて、ただ黙って狭山の言葉を待った。
携帯を持つ指先が、冷たい。


『私はもう、恋愛だとか、そんなこと言ってられない。誰かの気持ちを気にして、心配してくわけにはいかないの』

「…それは、俺がどう思ってるか、少しは気になったってこと?」

『わかんない。だから、わかんないことに時間と気持ち割いてる場合じゃないの。だから』


だから、何。

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